対象工事では空港での液状化対策を目的に、コンパクショングラウチング工法(以下、CPG工法)による改良体を658本造成した。改良長は4.7m(15ステップ)である。注入管理表には各ステップの改良体について、「ステップ数」「深度」「平均吐出量」「注入圧力(最大、最小)」「注入量(計画、実施、累積)」「実施率」を記録。それらの情報を、各ステップに合わせて作成した3次元モデルに対し、属性値として割り付けている。
本工事の改良体造成本数は658本であるが、1本が15ステップで造成されるため、改良体の3次元モデルの合計は、658本×15ステップ=9,870個となる。地表面については、5mメッシュ地点で自動追尾式トータルステーションによる動態観測も行った。
これまで、CIM適用現場における改良体のモデル化については、Autodesk社製のCAD作成ソフトを使用し手作業で進められていた。したがって、3Dモデルの生成業務は、専門のCADオペレータが担当することとなる。加えて、パソコンの能力にもよるが、3次元モデルも大規模になると手作業では扱いづらくなり、パソコンのフリーズが発生することも増えてくる。これらのことが、3次元モデルの作業効率を低下させる課題として指摘されていた。
作成された3Dモデルの閲覧には、同社製のレビューソフトNavisworksを利用している。Navisworksは、3次元CADデータをビューアに適した形式に変換するため、3次元オブジェクトが数万個以上となる場合でも快適な操作が可能となる。各改良体モデルへの属性情報の割り当てには、属性を表形式で一元管理できるCTC社製のアドオンソフトNavis+を活用した。
今回の施工管理においては、業務の効率化を目的にCTC社製のC-Groutを新たに導入した。C-Groutは、Autodesk社 Navisworksのアドオンソフトである。C-Groutの機能をNavisworksに追加することにより、地盤改良工の3Dモデルをビューアソフト上で簡単に作れるようになる。操作は、数項目の設定を行い「モデル作成」ボタンをクリックするだけである。また、C-Groutには、属性情報の管理機能も内包しているため、データの読み込みからモデル化までを操作性のよいNavisworks上で行うことができる。
C-Groutの取り扱いには、複雑なCADスキルを必要としない。専門のCADオペレータではなくても大量の3Dモデルを、ほぼワンクリックで自動生成できる。この効果は大きく、これまで5時間を要していた改良体のモデル作成時間が導入後には30分間へ、動態観測モデル作成時間では2日間から30分まで削減することができた。CIMモデル化に関する作業時間が大幅に短縮されたことにより、現場における3次元モデルの日常的な運用が可能となった。
また、手作業でモデル作成する場合と比較して作業ミスの可能性がなく、精緻なモデルをリアルタイムで生成できるため、施工現場で観測された鮮度の高い情報を元に直ちに正確なデータ分析が可能となった。
現場におけるCIMの活用に向けては、3次元CADオペレータの不足が課題として残されている。この問題を解決するためには、3次元モデル作成業務の効率化を欠かすことはできない。本事例では、C-Groutの導入によって、CPG 工法に関する作業時間を大幅に短縮できることが確認された。今後は薬液注入工法をはじめ、その他の地盤改良への活用を進めたい。
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